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〜「戦艦バウンティ号の叛乱」
帆船海軍の時代、実際に起こった叛乱事件を映画化したもの。
「パンの木を運んで来い」との軍命を受けタヒチに航海したバウンティ号。
厳格酷薄なブライ艦長に反発した、副長クリスチャンをリーダーとした乗組員が叛乱を起こし、艦長とそれに忠実な一部の部下をボートで海に流して、叛乱者たちはタヒチに、後にピトケアン島へ逃れたという事件です。
ちなみにブライ艦長のほうも、ボートで何千キロも大海原を横断し、なんと無事帰還を果たしたといいます。欧米では結構有名な事件で、私の知っているだけでも３回は映画化されています。
『戦艦バウンティ号の叛乱』(1935)
クリスチャン…クラーク・ゲーブル ブライ艦長…チャールズ・ロートン
『戦艦バウンティ』(1962)
クリスチャン…マーロン・ブランド ブライ艦長…トレバー・ハワード
『バウンティ／愛と反乱の航海』(1984)
クリスチャン…メル・ギブスン ブライ艦長…アンソニー・ホプキンス…なんですが、著作権切れということで、500円DVDとして売り出されているいくつもの会社から1935年版以外は、どうも現在絶版なんですね〜。
最初は、見比べてから感想書こうかと思ってたんですが、まずはこの『戦艦バウンティ号の叛乱』だけ取り上げることにします。さてこの1935年作品。
MGMの看板スターであるクラーク・ゲーブルと、名優の誉れ高いチャールズ・ロートンを主役に据え、いかにも大作然とした風格はあります。それもそのはず、1935年のアカデミー作品賞を取った、一応名作の折り紙つきの作品。ロートンのブライはやたらと巧い！吝嗇かつ卑怯、とことん器の小さい「嫌な奴」を演じきります(ただし、臆病者でも無能でもないのですねブライは)。 救命ボート上で、最大限に高まったブライの憎しみと妄執が、彼の最上の航海術とリーダーシップを発揮させるこの皮肉。
またゲーブルの役柄は、明るく人情味のある熱血漢。魅力はありますが必ずしも完璧な人間ではない、むしろ人間的すぎてウッカリはずみで叛乱に走っちゃったという、良くも悪くも腑に落ちる設定。
そして、ゲーブルと親しく艦長に批判的だが、あくまでも理性的な行動を取ろうとし叛乱を否定する士官候補生フランチョット・トーンを三本目の柱として描くことで、人間の情と理を、観客にそれぞれに納得させつつドラマは進行してゆきます。ただ、…英国産帆船小説のファンにとっては、せっかくの帆船＆航海描写に、気になるところが多々ありまして…。
何かというと、艦内の人間関係が、非常にアメリカナイズされたものになっているところ。
いかに俗物で強欲で卑怯であるとしても、航海者としては十分な技量がある、モノホンの艦長であるブライ艦長に対して、ありえないほど馴れ馴れしくリラックスしたクリスチャンの態度はなんなんだー！？いや、アメリカ海軍なら「それもあり」と思いますよ。映画で見るアメリカ人の執務態度って普段からアレだもん。
しかし、英国海軍なんです！鉄壁の規律、言葉や生活のスミズミまで反映される階級差の階段。
先任士官は雲の上、な筈の英国海軍ですよ。困るわコレじゃ…(ブライがクリスチャンを嫌っても無理はない、とつい思ったりしました(笑))
ゲーブルの着てる制服が、妙に現代的なブレザーに近いデザインなのも気になる。
英国海軍に対する愛がないじゃないか！…当たり前かもしれませんが。しょせん、大昔のハリウッド映画だし。
ブライやクリスチャンの性格設定や、細かい動きに史実と違った創作がまじっていたとしても、昔のハリウッド映画にはよくあること、さして何とも思いませんが、このあたりだけは残念でした。(後にタヒチへクリスチャンらを討伐に来るのはブライ本人ではありません。また、史実をみると、ブライがあそこまで極悪人だとはされてないようです。叛乱者たちがブライを殺し切れなかったこと、自力で帰還してみせたその根性と航海術を思えば、基本的に人間関係の機微にうとく要領が悪かっただけ…という気がしますね。数十年後、総督として赴任した豪州で、またトラブルを起こしたそうですから…。「ケイン号の叛乱」の、不適格者がウッカリ艦長の制服を着てしまったクイーグ艦長とはまた微妙に違うのです)
まあそれでも、帆船はいいな〜やっぱり〜♪
ということで、「英国」に拘らなければ、いろいろ十分楽しめる作品です。
出演者たちの「格」からすれば、やはりパワフルですし 廉価版だと特に(笑)、損は感じないはず。
そして、より新しい作品も、運よくレンタルビデオショップなどに残ってるようなら、見比べてみるのもオツなものでしょう。
おそらく新しいものほど、コスチュームや小道具などはより史実に忠実であろうかと思いますし…キャスティングの妙も夫々です。マーロン・ブランド＆トレバー・ハワードのコンビだと、ひたすらお堅い印象のハワードよりブランドのほうがある意味異常っぽいような気がしますし(笑)、アンソニー・ホプキンスのブライというと、また余程精妙微妙な凝った異常さを漂わせていそうです(笑)
…見比べ、いつか、できるといいな…
戦艦バウンティ号の叛乱 “Mutiny on the Bounty” ('35)/米国:MGM/カラー/監督フランク・ロイド/音楽ハーバート・ストサート/出演クラーク・ゲーブル, チャールズ・ロートン, フランチョット・トーン, ハーバート・マンディン他
↑これらのほか、探せば500円以下の廉価版も♪↑
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